新人でOSS-DB Gold合格
将来はスペシャリストとなり
PostgreSQLを普及させたい
新人でOSS-DB Gold合格
将来はスペシャリストとなり
PostgreSQLを普及させたい
NTTデータ 石井愛弓さんは入社前からデータベースの知識や経験が豊富で、入社1年目でOSS-DB Goldに合格。今は業務でPostgreSQLの技術支援を行いながら、PostgreSQLの普及に尽力しています。
石井さんはまだ入社3年目の若手。もともとデータベースに詳しく、PostgreSQLをメインとした技術支援チームに配属しています。現場に出ることもありますが、基本的には現場からのデータベースに関連した問い合わせに対して調査し、回答するのが仕事です。 例えば「話題の新機能を使うにはどうするか」、「顧客の要件を満たすには具体的にどの技術で実現するのが最適か」。技術の一般論ではなく実際の顧客環境を踏まえた上で最適解を考えます。新機能を使うためにPostgreSQLをバージョンアップしたら現在稼働しているシステムに影響はないかも調べます。
時には商用データベースとPostgreSQLで性能比較検証することもあります。商用データベースを稼働させている環境でPostgreSQLへ移行した場合、実業務に問題ない性能を出せるかを検証するのです。 商用データベースからPostgreSQLへの移行は多くの企業にとって関心が高いテーマです。ライセンスコストが下がることは明確であるものの、機能や性能で要件が満たせなくなる、あるいは移行や運用など別のコストが増えてしまうと本末転倒となってしまいます。要件が満たせて、追加で発生するコストを抑えるにはどんな方法があるかと検討していく必要があります。 石井さんは「現在のPostgreSQLは商用データベースと比べてひけをとらない」と見ています。ただし違うソフトウェアなので、全く同じ事はできません。例えばOracle DatabaseのReal Application Clusters(RAC)はOracle Databaseの独自機能なので、当然PostgreSQLにはありません。しかしRACの使用目的が可用性を高めるためであれば、PostgreSQLのストリーミングレプリケーションなどで代替することも可能です。本当に実現したいことは何か、性能の許容範囲はどこまでかを明確にすることなど、石井さんは「要件を見つめ直すことが大切です」と言います。
実はリケジョの石井さん。学生時代のデータベース講義からデータベースの正規化に高い関心を持ちました。「よくできているなって。そこに美学を感じてしまいました」と笑います。 学生時代から知識だけではなく実践力も鍛えていました。アルバイトとしてITベンチャー企業でアプリ開発に携わっていたほどです。入社前からセミプロだったと言ってもいいでしょう。入社した年の春には難関である情報技術者試験のデータベーススペシャリスト試験に合格を果たしました。石井さんは「そのままデータベースを極めたい」と希望していたところ、念願かないOSSデータベースのチームに配属されました。
そんな石井さんにとってNTTデータは多くの師がいる職場です。例えばPostgreSQLコミュニティにストリーミングレプリケーションのコードを提供し、後にコミッタを務めるようになった藤井雅雄さんが石井さんの上司です。ほかにも多くのPostgreSQLスペシャリストとなる先輩たちが石井さんを育てています。
石井さんが学生時代に使用していたデータベースはMySQLで、社会人になるまでPostgreSQLは未経験でした。しかし先輩たちは「まずはOSS-DB技術者認定試験に合格しようね」と認定教材を手渡してくれて激励してくれたそうです。 そこであらためてPostgreSQLについて学び、入社1年目の6月にOSS-DB Silver、12月にOSS-DB Goldに合格。GoldではOSS-DB認定教材に加えて、受験前に多くの文献に目を通したそうです。学習したなかでもおすすめは「PostgreSQL高度技術者育成テキスト」、「内部構造から学ぶPostgreSQL設計・運用計画の鉄則」、「OSS-DB Gold 技術解説無料セミナーとその過去資料」。ほかにもPostgreSQLの日本語公式マニュアルや「Let’s Postgres」など、ほぼ一通りの文献に目を通しました。
もちろん手を動かすこともしました。職場にはPostgreSQL環境があるので実際にストリーミングレプリケーションを設定し、「ちゃんとWALが作成されている」と確認したり、レプリケーション先のサーバーからデータが参照できることを確認したり、機能を確かめていきました。 「OSS-DB Gold試験で勉強したことは後の実務でも役に立ちました」と石井さんは言います。実務で機能を検証するときに「あの設問で試したことがある」ものに遭遇すると、初めて試すよりも深く理解が進むそうです。石井さんは「試験に合格すると対外的なアピールにもなりますし、自信にもつながりました」と話しています。
PostgreSQLは機能や性能面では商用データベースと並ぶほどになりつつあります。残る課題として石井さんは「技術者がまだ少ない」ことを挙げています。技術者不足では現場を支えられる人がいなくなりますので、技術採用時には致命的な問題となります。ただし見方を変えれば、採用は増えていく一方で技術者は追いついていないという状況なので、PostgreSQLスキルを持つ技術者は貴重で求められているということです。 いま石井さんのPostgreSQLとの関わりは実務だけではなく、コミュニティへの貢献へも広げています。2016年12月に開催されたPostgreSQLの国際イベント「PGConf.Asia」では発表者として登壇したり、PostgreSQLドキュメントで誤記を発見してコミュニティにレポートしたり、コミュニティでの存在感を高めつつあります。カナダのオタワで開催された「PGCon」について感想を聞くと「懇親会でPostgreSQLのコアメンバーを務めるトム・レーンさんとツーショットを撮りました」と嬉しそうに笑います。 これから目指すことに聞くと、石井さんは「近年、PostgreSQLは社会インフラや大規模なシステムでも採用が進んでおり、注目度はますます高まっています。一方で、OSS-DBに漠然とした不安を持っている人も多く、いま一歩採用に至らないケースもあります。私は、PostgreSQLのエキスパートとなって、PostgreSQLを採用する案件の後押しをしていくのと同時に、PostgreSQLのポテンシャルをより多くの人に知ってもらえるような活動もしたいです。」と話していました。
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