あこがれはコミッター
パッチレビューや機能提案も
業務でコミュニティ貢献
あこがれはコミッター
パッチレビューや機能提案も
業務でコミュニティ貢献
富士通 出利葉健さんは2016年に富士通入社。現在はPostgreSQLコミュニティへの貢献やFUJITSU Software Enterprise Postgresの機能開発などに従事しています。
いま私はオープンソースのPostgreSQLコミュニティに参入して新機能の開発や品質強化などを担当しています。PostgreSQLコミュニティはメーリングリストで情報交換や機能開発の方針をディスカッションしているのですが、そこに私や同僚が「富士通からこんな機能を開発しました」と提供したりしています。5~6人のチームで行なっています。
このPostgreSQLコミュニティ貢献と平行して、FUJITSU Software Enterprise Postgresの開発もしています。こちらはミッションクリティカルな業務システムで使えるように、PostgreSQLの性能や機能を強化した製品です。銀行のシステムのように、絶対に止まってはいけないようなミッションクリティカルなシステムで使われています。
お客様の要件に合わせて個別に機能を開発することもあります。そのときにPostgreSQL本体に不具合を発見すれば、コミュニティにレポートや修正を提供します。あるいは個別開発した機能が世界中のPostgreSQLユーザーに恩恵があるものなら、コミュニティに提供することもあります。
これまで私が関与した機能ですと、C言語からPostgreSQLを操作する機能「C言語への埋め込みSQL文」があります。まだ提案段階で本体にコミットされるまでには至っていませんが、この機能はミッションクリティカルなシステムでデータベースを使っているお客様からの要望が高いです。
コミュニティへの貢献は機能開発や品質向上だけとは限りません。ドキュメントの誤字を報告したり、分かりづらい説明があれば提案を修正したりすることも貢献になります。
コミュニティでは共通言語が英語のため言語の壁を感じることがあります。また「この道、何十年」というような高度な技術や知識を持つベテランの方々もいらっしゃいます。そうしたなかで機能を開発したり、説明したり、難しいからこそやりがいや成長を実感しています。
最近の貢献としては、プログラムの修正確認をしました。後日、コミュニティで精力的に活動しているメンバーから「I think getting the comments (and docs in general) right is just as important as the code. So thank you for your review!」とお礼のメールをもらいました。正直にうれしかったです。こうしたコミュニティでのメンバーとのやりとりが励みになります。
プログラムの修正確認というのはソースコードを見るだけではなく、「こうすればより精練された構造的にわかりやすい記述になります」とか「こうすればより性能を高められます」などの修正を提案することもあります。またPostgreSQLの基本設計に適したものかどうかも考慮して、意見を述べたりすることもあります。
学生時代は情報系を専攻していました。ロボットの触覚に関して研究し、人工知能も扱いました。ロボットの先にマイクをつけて、ものを触ったときの音データを人工知能で分析して「この布はツルツルかザラザラか」を判断するという研究でした。
研究ではデータベースは使っていませんでした。分析データは自分だけ、あるいは先輩と共有する程度で、サイズも大きくなかったので、データベースを使う必要がなかったのです。そのため学生時代はPostgreSQLについては知っていたものの、使うことはありませんでした。
入社してからデータベースに関して改めて学びました。私にとって最初に業務で使うデータベースがPostgreSQLでした。PostgreSQLは学校の教科書にあるような、データベースのデータ構造やアルゴリズムなどの技術要素が全部入っているデータベースだと思います。業務を通じ学ぶことが多く、大変勉強になります。
2016年秋からPostgreSQLに関する業務に携わるようになりました。業務を遂行していく上では、まだPostgreSQL全体の知識や技術が不足していると感じ、また先輩との差を埋めたいという気持ちもありました。2017年に入るころ「いい勉強方法はないか」と探したところ、OSS-DB 技術者認定資格(以下、OSS-DB)にたどり着きました。資格取得のための勉強を通じてPostgreSQLの全体を学べることが良いと思いました。
さらに、この4月より弊社の技術者認定制度(以下、富士通ミドルウェアマスター)とLPI-Japanの「OSS-DB Silver」資格が連携したため、富士通ミドルウェアマスターの「FUJITSU Certified Middleware Professional データベース Standard(以下、Standard)」の資格を取得することで、「OSS-DB Silver」の資格を同時に取得できるようになりました。これにより、学習意欲が倍増しました。「OSS-DB Silver」認定証にもFujitsuのロゴが印刷されています。
2017年に入ってから勉強を開始し、同年3月に合格しました。使用した問題集は『徹底攻略 OSS-DB Silver問題集』(出版:インプレスジャパン)です。2周解きました。加えてOSS-DB公式ホームページにある「サンプル問題/例題解説」の例題を解くこともしました。問題数が多くて参考になりました。基本的に机上での勉強でしたが、覚えにくいコマンドは実機で手を動かすことで体得していきました。
富士通には技術者育成の一環として、独自の技術者認定制度である富士通ミドルウェアマスターがありますが、広くパートナー様およびお客様に取得していただけるよう、弊社の認定制度にOSS-DB技術者認定試験を採用させていただきました。そのため、富士通ミドルウェアマスターのStandard資格を取得することで、「OSS-DB Silver」の資格を同時に取得することができます。 富士通には「OSS業界をけん引していきたい」という思いがあります。そこでデータベースはオープンソースのPostgreSQLを使い、コミュニティにも貢献し、技術者育成も後押ししていこうと考えています。
試験を通じてPostgreSQLの知識や技術を一通り学ぶことができてよかったです。これまでは自分が関係した機能や分野しか分かりませんでした。しかし合格するころには全体像が把握できるようになり、どのような機能を開発しようとしているのかなど、社内外の議論に参加できるようになりました。
また富士通社内にあるスキル認定制度ではOSS-DB Goldが要件の1つになっています。OSS-DB Silver合格でこの要件に一歩近づくことができました。年内にはOSS-DB Gold合格を目指して頑張ります。
OSS-DB Gold取得を目指す理由はもう1つあります。OSS-DB GoldはOSS-DB Silverと比較して運用管理に関する設問が多く設定されています。まだ運用管理に関しては経験が少ないため、経験がない分野を補うためにもOSS-DB Goldの試験を通じて詳しくなろうと思います。
これからもPostgreSQLのスキルを高めていきたいです。今年はカナダのオタワで開催された「PGCon - PostgreSQL Conference」に参加することができ、現地でコミッターやコアメンバーと直接話す機会がありました。彼らは知識や技術力だけではなく、説得力も兼ねそろえていて「すごい、こんな人たちのようになりたい」と思いました。ゆくゆくはPostgreSQLのコミッターになりたいです。まずは現在提案に関わっている機能をPostgreSQLの本体に入れたいです。
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