PostgreSQLの「作り手」たちの育成に寄与するOSS-DB技術者認定

富士通株式会社

ソフトウェアオープンイノベーション事業本部 本部長
粟津 正輝 氏(写真中央)

ソフトウェアオープンイノベーション事業本部 データマネジメント事業部 第一開発部
黒田 隼人 氏(写真左) 
2018年入社、32歳、OSS-DB Silver(2019年取得)、OSS-DB Gold(2022年取得)  

ソフトウェアオープンイノベーション事業本部 データマネジメント事業部 第一開発部
柴垣 向志 氏(写真右)
2022年入社、28歳、OSS-DB Silver(2022年取得)、OSS-DB Gold(2024年取得)

   

OSS-DB Gold取得者数「不動の1位」の富士通に聞く

富士通株式会社のソフトウェアオープンイノベーション事業本部は、SIや業種ソリューションに活用されるミドルウェアを開発・販売。世界52カ国、累計4万社以上の顧客に1千万ライセンス以上を提供しており、金融・公共・政府系をはじめ、あらゆる業種の社会システム、クラウド、デジタルビジネスを持続的に支える存在だ。

近年はDXに向けたICTシステム変革の中で、データベース分野を含む先端技術をいち早く取り入れた製品・サービスを提供。PostgreSQLをベースに「セキュリティ」「性能」「信頼性」を強化したエンタープライズ版「Fujitsu Enterprise Postgres」は、国内外のミッションクリティカルシステムで採用されている。

同社は、OSS-DB Gold認定の取得者数で2022年以降、連続して第1位を獲得している企業でもある。この背景には、どのような思想と仕組みがあるのか。

今回は、ミドルウェア事業を統括する本部長の粟津正輝氏、PostgreSQLコミュニティでコントリビュータとして認定された黒田隼人氏、入社2年目でOSS-DB Goldを取得した柴垣向志氏の3名に話を聞いた。

PostgreSQLを「作る側」の技術者集団とOSS-DB認定

まず、粟津正輝氏に、PostgreSQL技術者の育成とOSS-DB認定の意義について伺った。

——データマネジメント事業部は、どのような組織なのでしょうか。

粟津 データベース製品を開発している組織です。ひとことでPostgreSQL技術者といっても、大きく分けて「SQLを書いてデータベースを使う側」と「PostgreSQLそのものを開発する、作る側」がいます。富士通は、国内だけでなく、グローバル全体で、これら双方の技術者を有しています。たとえば、インド、フィリピン、コスタリカ、ポーランドなど世界7か国には、利用から開発まで幅広い領域で、PostgreSQLに関わる多数のエンジニアが在籍しています。

一方、データマネジメント事業部の主な役割は、作る側であり、データベースのソースコードを理解して開発できる、高度な専門性を持つ技術者が集約されています。

——「作る側」として、どのような価値を生み出しているのでしょうか。

粟津 私たちの技術者はPostgreSQLをはじめとする、さまざまなOSSコミュニティのプレミアメンバーとして活動し、OSSの進化そのものにも貢献しています。そのうえで、PostgreSQLにミッションクリティカル技術を加えた「Fujitsu Enterprise Postgres」を開発・提供しています。「Fujitsu Enterprise Postgres」は、暗号モジュールとして北米の非常に厳格なセキュリティ基準である「FIPS 140」に準拠しています。差別化のポイントは機能面の違い、サポート体制、そして実績の3つです。

——実績という点では、どのようなものがありますか。

粟津 ここ3年ほどで、日本の銀行をはじめとするミッションクリティカルなシステムにおいて「Fujitsu Enterprise Postgres」をご採用いただき、おそらくPostgreSQLとして日本国内最高レベルの安定稼働を実現しています。

——近年、リレーショナルデータベースに対する機能・性能の要求で特徴的な動きはありますか。

粟津 生成AIの活用ニーズが高まる中で、単なるデータの格納庫ではなくなってきています。AIと連携してビジネス価値を創出する中核的な役割を担うようになっており、AIモデルの学習や運用に必要な膨大なデータの処理・管理は、今後ますます重要になります。私たちはすでにMCPサーバー対応やRAGとしての利用など、データベースと生成AIの接点となる機能を実装しています。

こうした価値を生み出し続けるために、PostgreSQLの開発者には、時代の潮流を見据えた高いレベルの技術力と対応力が必要です。

※MCP:Model Context Protocolの略で、AIモデルが外部のツールやデータソースと標準化された方法で接続・通信するためのオープンプロトコルのこと。対応することで、生成AIから自然言語でデータベースを操作できるようになる。

※RAG:Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略で、生成AIが回答を生成する際に、外部の知識ベースやデータソースから関連情報を検索・取得し、それを文脈として活用することで、より正確で最新の情報に基づいた応答を可能にする手法のこと。データベースにベクトル検索機能などを実装することで可能となる。

——高いレベルの技術力と対応力とは、具体的にどのようなことを求めているのでしょうか。

粟津 私たちが技術者に求めるのは、単なる知識レベルに留まりません。PostgreSQLのアーキテクチャを深く理解し、「セキュリティ」「性能」「信頼性」を強化する開発ができること。バックアップ・リストア、冗長化構成、性能最適化だけでなく、最新のAI技術などを取り入れた、多様なお客様のシステム特性やニーズを深く理解して最適な技術提案を行える能力です。つまり、PostgreSQLを「使える」だけでなく、「理解したうえで開発し、お客様のシステムを止めないように支え、先進技術を含め応用できる技術者」であることを重視しています。

——そのレベルに到達するために、OSS-DB認定を推奨しているわけですね。

粟津 はい。OSS-DB認定取得を推進する理由は、大きく3つあります。

1つ目は、オープンソースデータベースの市場ニーズへの対応。OSS-DBの採用が急速に進むなかで、深い知識と高度なスキルを持った人材が不可欠です。2つ目は、技術力と品質の保証、そしてお客様からの信頼獲得。お客様が求める堅牢性、信頼性、高品質なサービスを提供し続けるには、設計・構築から運用・トラブルシューティングまでの高度なスキルが欠かせません。3つ目は、社員の継続的なスキルアップとキャリアパスの支援。OSS-DBの専門家としてのキャリアパスを明確にし、より高度な技術領域への挑戦を促しています。

————そのためには、OSS-DB Goldのレベルが必要なのでしょうか。

粟津 Silverが一般的なPostgreSQLの知識を問うのに対し、Goldでは実際のシステム運用におけるトラブル対処、チューニング、障害対応といった実践的で高度なスキルが問われます。Gold認定の取得は、PostgreSQLの高度な運用・開発スキルを持つ技術者であることを示す一つの指標だと言えます。

————全体的な技術力向上の取り組みとして導入している仕組みはありますか。

粟津 属人性を排除するために、PostgreSQLの開発とサポートの担当を計画的にローテーションさせています。全体的な底上げをしないと、どんどん広く深くなっている技術に対応できません。業務の中からだけの知識では偏りがある。体系的に学ぶことで、それが業務に返ってくるのです。

製品は、開発業務だけでなくサポート業務もあります。サポート業務では、サポート窓口で可能な限り問題を解決することが重要です。サポート窓口でも解決できない場合、製品開発の中核を担う開発者による対応が必要となり、本来注力すべき開発に集中できなくなるからです。サポート対応をできるだけ手前の段階で解決できれば、開発者は開発に専念できます。そのためには、サポート体制全体のスキルや対応力の底上げが必要なのです。

——認定取得に報奨金はありますか。

粟津 報奨金制度は用意していません。金銭的なインセンティブは、その本質的な動機付けを損なう可能性があると考えるからです。オープンな技術で自分を成長させるという目的意識が大事であり、日々の1on1を通して取得計画を確認しています。PostgreSQLの開発担当は基本的に全員がSilver以上を保有しており、Goldの取得を強く勧めています。

——その効果はいかがでしょうか。

粟津 国内事業においてはPostgreSQLのプロフェッショナル集団としてのブランド力を強化し、お客様への提案力やサービス品質の向上に直結しています。OSS-DB認定を取得した社員は、LPI-Japanが定める厳格な基準を満たした知識とスキルを有していると認められますから、お客様には私たちの製品やサービスを安心してご利用いただいています。

海外展開においても、グローバルメンバーのスキルアップにOSS-DB認定取得を検討しており、海外市場でもPostgreSQLのエキスパートとして存在感を高めていきたいと考えています。

PostgreSQLコントリビュータが語る「Goldは世界の開発者に追いつく最短経路」

次に話を聞いたのは、2025年1月にPostgreSQLのコントリビュータとして認定された黒田隼人氏だ。若くしてPostgreSQLの公式ウェブページにも名前が掲載されている世界レベルの開発者である。ミッションは「自身の開発を通じてデータベースOSSそのものの価値を高めるとともに、富士通のプレゼンスを向上させること」だという。

——コントリビュータとして、日々どのようなことをしているのか教えてください。

黒田 PostgreSQLコミュニティでは、すべてのやりとりがメーリングリスト上で行われています。開発者である私たちは、常にメールをチェックし、返信の有無を確認しています。返信があれば、さらに議論を深めるメッセージを送るといったプロセスを繰り返します。新機能を提案するときには、その背景や意図を自身でまとめて、「pgsql-hackers」というメーリングリストに英語で投稿します。さまざまなコメントが届きますので、互いに議論を繰り返すことで、その機能を形にしていきます。他の開発者が提案する内容の技術レビューも重要な活動の一つです。

——現在、PostgreSQLの「論理レプリケーション」の拡張機能の開発に注力しているとのことですが、これはどのような機能なのでしょうか。

黒田 現在のPostgreSQLの通常のレプリケーションでは、スタンバイ側でデータの変更ができません。それを可能にするのが、論理レプリケーションの仕組みです。論理レプリケーションでは、情報を抽象化してテーブル単位の変更に置き換えることで、サブスクライバ側でもデータを受け取りつつ変更を反映できるようになることを目指しています。

——国際カンファレンスでも講演されたとのことですが、どのような内容でしたか。

黒田 論理レプリケーションに関わるもので、「大規模トランザクションの並列適用」というテーマで講演しました。PostgreSQLのもともとの仕組みでは、データがコミットされてからサブスクライバ側に変更が流れていくため、トランザクションが長くなると遅延が大きくなっていました。これを2段階に分けて改良しました。PostgreSQL 15の段階では、まず、コミット前にデータだけ転送しておいて、コミットされたら反映するという仕組みに改良しました。そしてPostgreSQL 16では、それをさらに強化し、受信したデータを即時、かつ並列に適用する専用のワーカーを用意することで、性能を大幅に向上させました。私が開発に参加し、講演で発表したのは、この並列適用に関するテーマです。

——それは実際にPostgreSQLの正式バージョンに反映されているのですか。

黒田 はい。すでにPostgreSQLバージョン16で取り込まれています。チームで取り組んだ成果です。

コントリビュータとして世界で活躍する黒田氏だが、OSS-DB Goldの取得が大きな転機になったという。2022年にコミュニティ活動を本格的に始めた当初は、海外の開発者の議論についていけなかったと率直に語る。

黒田 正直、メーリングリストに投稿される内容が、何を言っているのか、まったく理解できませんでした。コーディングはもちろんのこと、チームメンバーとの高度な技術議論についていけなかったり、世界中の開発者からのレビュー内容を深く理解できなかったり、かなり苦戦していました。

自分のPostgreSQLに対する知識不足を感じる中、体系的に学習できる方法としてOSS-DB Goldを見つけました。OSS-DB Goldは例題解説も公開されていますし、そのための勉強の資料も書籍もある。これに沿って学んでいくのが一番効率のいい方法だと考えて、取得を目指しました。

——学習の方法を教えてください。

黒田 「例題を解く」「ドキュメントを読む」「ソースコードを読む」の3つのステップです。

まず、Web上で公開されている例題や公式問題集を徹底的に解きました。これで、どの領域が試験で問われやすいのか、自分がどの分野の理解が足りないのかを客観的に把握できます。

次に、正解できなかった部分について、PostgreSQLの公式ドキュメントを読み込みました。PostgreSQLのドキュメントは、とても丁寧に整備されていて、日本語にも翻訳されているので、専門的な内容もスムーズに読み進められます。

——ソースコードを読むというステップは、どのようにされたのでしょうか。おそらく全体で100万行を超えていると思うのですが。

黒田 最初はソースコードのファイル名から推測して探すくらいでした。しかし、作業を進めるうちに、ディレクトリ構造がコンポーネントごとに分かれていることが分かってきます。たとえば、ソースの下にbackendというディレクトリがあり、さらにその中にreplication、そしてlogicalといった形でディレクトリが階層化されています。この構造を手がかりにコードを読み解いていきます。

——具体的には、どのような処理をソース上で確認しましたか。

黒田 たとえば、ホットスタンバイインスタンスが起動してから実際にWALを受信し始めるまでの流れや、逆にスタンバイからの要求を元にWALを送り始める過程などをソースコードで確認しました。これによって、PostgreSQLの内部動作の具体的な流れから外部仕様までを一貫して理解できるようになっただけでなく、開発における基本的な設計思想やコーディング規約にも触れることができました。これが今のコミュニティでの開発活動に直結する大きな学びになりました。

——OSS-DB Goldを取得してから、どのような変化がありましたか。

黒田 以前は難解に感じていた技術的な概念や基本設計がクリアになり、コミュニティでの議論にも自信を持って参加できるようになりました。その結果、より質の高いコードの提案やレビューが行えるようになり、それが現在のコントリビュータとしての認定につながっています。

また、「まったく知らない・聞いたこともない機能」が減ったので、カンファレンスでなじみのない技術の内容を英語で聞いても、「そういえば、そんな機能があったな」と見当がつけられるようになりました。こうした経験があると、何でもスッと入ってきやすいです。

——これからコミュニティ開発を志す若手エンジニアに、最初の一歩として何を勧めますか。

黒田 まずはドキュメントを読んでみて、何か課題や改善点を見つけることです。説明が分かりにくいところや誤字のような観点でも良いと思います。コミュニティに受け入れられると嬉しいので、それが成功体験になってモチベーションにつながります。

——今後の目標を教えてください。

黒田 今やっている論理レプリケーションの分野で、「やっぱり富士通がすごいよね」と認められる地位を築けたらと考えています。さらに、メジャーコントリビュータやコミッタとしても認められることを目指しています。コミュニティ内で開発者間の信用を勝ち取るために最も大切なのは「継続性」だと考えているので、質の高いレベルでの開発を続けていきます。

また、OSS-DB Goldで培った体系的な知識を活かして、今後は特定の機能領域だけでなく、より広範な領域に守備範囲を広げていきたいと考えています。

入社2年目でGold取得 —— 「知識が点ではなく線としてつながった」

3人目は、Fujitsu Enterprise Postgresの機能開発を担当する柴垣向志氏だ。2022年入社の28歳。入社1年目でSilver、2年目でGoldを取得した若手エンジニアである。

——現在の業務内容を教えてください。

柴垣 Fujitsu Enterprise Postgresの開発を担当しています。PostgreSQLのオープンソースとしての強みを活かしつつ、お客様の多様なニーズに応えるため、コア部分への機能修正やパフォーマンス改善、そして独自の拡張機能開発を行っています。近年、生成AI、特にRAGのような手法が注目され、業務データを生成AIで活用したいというニーズが高まってきています。それに伴い、データベースは単なる保存先ではなく、AIが参照する知識基盤としての役割を担うようになってきました。こうした変化を踏まえ、生成AI利用を目的とした機能開発に力を入れています。

——具体的にはどのような機能でしょうか。

柴垣 生成AIを安全に業務で活用するため、構築・運用の負担を抑えつつ、データベースに格納されたデータをそのまま生成AI利用につなげられる機能を取り入れています。

RAGでは、社内のデータをベクトルデータに変換し、類似検索によって関連情報を抽出し、その結果を生成AIに渡します。ベクトルデータへの変換には、Pythonのライブラリを使って埋め込みモデルにデータを渡し、トークン分割を行うといった処理が必要で、多少複雑なプロセスを伴います。これらをアプリケーション側でツールとして実装すると、開発や保守の負担が増えてしまいます。そこで、こうしたベクトル変換処理を、データベースの機能として提供しています。データベース内部では専用のワーカープロセスが動作し、データが格納されたタイミングや変更されたタイミングでデータを取得し、埋め込みモデルへの投入からベクトル変換、テーブルへの格納までを自動で実行します。また、類似検索時に入力される検索用のテキストについても、同じ仕組みでベクトル変換を行います。アプリケーション側はベクトル変換を意識することなく、テキストを指定するだけで意味的な類似検索を利用できます。

これにより、データ格納時に自動でベクトル変換し、データや検索条件の変更に応じて自動で最新化されるため、ETLなどの前処理にかかる手間を大幅に削減できます。生成AIを業務で活用するための前処理をデータベース側に集約できる点が、大きな特長です。また、この機能で扱うデータは、透過的データ暗号化をはじめとするFujitsu Enterprise Postgresが備える既存のセキュリティ機能によって保護され、従来の業務データと同様に安全に利用できます。

※ベクトルデータ:テキストや画像などの非構造化データを、数百〜数千次元の数値の配列(ベクトル)として表現したデータのこと。データ同士の意味的な近さを数学的に計算(類似検索)できるようになる。

※埋め込みモデル:Embedding Model。テキストなどのデータをベクトルデータに変換するための機械学習モデルのこと。入力されたテキストの意味的な特徴を捉え、意味が近い文章同士は近いベクトルに、意味が遠い文章同士は遠いベクトルに変換する。

※ETL:「Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(格納)」の略で、データを元のソースから取り出し、目的に合った形式に変換した上で、格納先のデータベースやデータウェアハウスに読み込む一連のデータ処理工程のこと。

——入社2年目でGoldを取得されたのは早いですね。

柴垣 もともとは「3年目の終わりくらいまでに取れたらよい」という思いでしたが、同期が1年目で取得しているのを見て意識が変わりました。

「もっと早く、自分もPostgreSQLの深い知識を習得し、開発の土台を固めるべきだ」と思い始めました。

——学習方法を教えてください。

柴垣 単にコマンドや設定項目を覚えるのではなく、「そのコマンドの裏側でどんな処理が動いているのか」「どのプロセスがどの役割を担っているのか」を自身の言葉で説明できる状態を目標に置きました。

コマンド系の分野は業務で実行する機会が多かったので、正答率を上げるのにそこまで時間はかかりませんでした。一方で、コマンド実行の背景にある内部構造の理解は当初弱くて、そこが課題でした。チューニングや障害対応は業務で触れる機会が少なく、知識量も多く経験が重要な分野なので、特に苦戦しました。

ちょうど認定教材が出たタイミングだったので、それで一通りまずやって、分からないところを深堀りしていく勉強法をとりました。公式ドキュメントで前提と全体像を押さえたうえで、書籍やLPI-Japan認定教材で整理し、最後にソースコードで「なぜその挙動になるか」を確認する、という順序で理解を深めました。

——「ソースコードを読む」というアプローチは、認定試験の勉強としてハードルが高いように思えますが、そうする必要は、どこにあるのでしょうか。

柴垣 合格をゴールにするなら、教材だけでも良いでしょう。でも、私たちはユーザーではなくデベロッパーです。合格した上で、モノを作らなければならない。そうなると、裏で、どのように動いているかまで深く理解しておいた方がよいのです。ですからソースコードまで読む勉強法を取りました。

——OSS-DB Goldを取得して、何が変わりましたか。

柴垣 一番大きいのは、PostgreSQLの知識が点ではなく線としてつながったことです。体系的に定着したことで、開発業務における技術的な議論にもより積極的に参加し、建設的な意見を出せるようになりました。たとえば、特定の機能の挙動について議論になった際に、内部構造を踏まえた上でパフォーマンスへの影響や、他の機能との連携について深く考察した意見を出せるようになりました。

また、何か不明な点や課題に直面した場合でも、「この機能であれば、公式マニュアルのこのセクションや、ソースコードのこのあたりにヒントがあるかもしれない」と的確にあたりを付けられるようになりました。これは、問題解決までの時間を大幅に短縮し、開発効率の向上にもつながっています。

——今後のキャリアについて教えてください。

柴垣 製品開発に加えて、OSSコミュニティにも貢献していきたいと考えています。自社製品を良くすることとコミュニティ貢献は決して競合するものではなく、むしろ密接に連携し合う関係にあると思っています。

コミュニティで上流の課題が解決されれば、それは結果として製品の品質向上にも直結します。製品開発で得た知見をコミュニティへ還元し、バグ修正やドキュメント改善、検証結果の共有など、具体的な形で貢献を積み重ねていきたいです。自分が作った機能が世界で使われている、という実感を得たいなと思っています。

全体を知るためのGold受験

最後に、粟津氏に他のIT企業の経営者に向けたメッセージを伺った。

粟津 これからのお客様は、ますますオープンでデファクトなものを求めていきます。大規模なお客様でもマルチベンダー環境が増えていて、それぞれのベンダーが出している製品を、ひとつひとつ導入するのではなく、標準仕様を決めるという流れが始まっています。その標準に選ばれるのが、OSSなのです。OSSを活用するということを、最初に考えるべきだと思います。

粟津氏はまた、若手エンジニアに向けて次のように語った。

粟津 ベンダー試験だけだと、そこで止まってしまいます。オープンな技術は共通項であり、これからもっと求められます。ベンダーロックインを避けたいというお客様のニーズは、今後さらに強くなっていくでしょう。

これからOSS-DB Goldの取得を目指す人へのメッセージを、黒田氏と柴垣氏にも聞いた。

黒田 隼人 氏 OSS-DB Gold(2022年取得)

黒田 OSS-DB GoldはPostgreSQLに関する最良の教科書であると同時に、世界の開発者に追いつくための最短経路でもあると思います。認定試験の勉強を通じて、時代の最先端を行く技術者と議論できる知識を蓄えていきましょう。

柴垣 OSS-DB Goldは、浅い知識や丸暗記では太刀打ちできない、奥深い内容を問われる認定試験だと思います。だからこそ、取得したときの達成感と、得られる深い知識は計り知れません。「なぜそうなるのか」「内部でどのような仕組みで動いているのか」を深く理解して挑むことが重要です。公式ドキュメントを読み込み、書籍で体系的に整理し、最終的にはソースコードで動作原理を確認する——その多角的なアプローチが、確実に合格へと導いてくれると思います。

開発者としてソースコードに向き合う二人が、揃って語るのは「基礎」の大切さだ。黒田氏は「今流行っているものは明日廃れますよ」と語り、柴垣氏は「基礎的な技術を知れば、いろんなところに応用がきく。まず長く使われている基礎的な部分を押さえること」と続けた。

OSS-DB認定は5年ごとの更新である。更新について、どのように考えているのだろうか。

黒田 PostgreSQLのサポート期間も5年間なので、5年経った頃には時代遅れの知識になっているかもしれない。学び直してくださいというのは正しいと思います。実際に開発している人にとっては、最新の情報は日々追っていますから、むしろ広い知識を確認する良い機会になります。

今回の取材で印象的だったのは、PostgreSQLコントリビュータという世界レベルの技術者でさえ、OSS-DB Goldの学習が不可欠だったという事実だ。黒田氏は「質の高いコードの提案やレビューができるようになり、コントリビュータ認定につながった」と語り、柴垣氏は「知識が点ではなく線としてつながり、問題解決の時間が大幅に短縮された」と実感を述べた。

凄い人だからこそ、全体を知る。そのための最良の手段が、OSS-DB Goldだと言えよう。

柴垣 向志 氏 OSS-DB Gold(2024年取得)

会社概要

■商号    富士通株式会社
■設立    1935年6月20日  
■本社所在地   〒211-8588 神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1 
■事業内容 
・サービスソリューション
・ハードウェアソリューション
・ユビキタスソリューション
■URL      https://global.fujitsu/ja-jp 

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