どんな業種からの案件にも対応できる一方で、奥が深くさまざまな周辺知識を求められるデータベースエンジニアの仕事

富永 : 実際の仕事の中で、OSS-DB認定を持つエンジニアはどう活躍をされていますか?

田坂氏
当社でシステム開発に関わる仕事をしているエンジニアは、主にソフトウェアの開発(要件定義、設計、コーディング、評価テスト)を担当しており、多くのエンジニアが商用ソフトウェア・OSSに関係なく何かしらのデータベースを利用した経験をもっています。当社では現在、約70名のエンジニアがOSS-DB Silverの認定を取得しており、PostgreSQLを活用するソフトウェア開発において、SQLやJava等の開発言語を用いたアプリケーションの設計・コーディングを担当するエンジニアとして活躍しています。
一方、上位のOSS-DB Gold認定を取得しているメンバーは、PostgreSQLを使う側ではなく、データベースの設計(概念設計/論理設計/物理設計)や構築を担当します。彼らはシステムの要件からデータベースに必要な要件を取りまとめて、それに適したデータベースを選択します。また、PostgreSQLを使う場合も可用性はどう対応し、性能は大丈夫かなど、機能的な面と非機能的な面を評価して採用を決め、その後、設計し構築していくなどの役割を担うのもOSS-DB Goldの認定を取得しているメンバーになります。

富永 : OSS-DB Silverを持つエンジニアとOSS-DB Goldを持つエンジニアとで、プロジェクト内での役割分担はあるのでしょうか? 

田坂氏
当社では、案件を受注するとそのプロジェクトを立ち上げるときに要員をアサインします。その際、PostgreSQLを使う場合には、開発メンバーとしてOSS-DB Silverレベルのアプリケーション開発経験のあるエンジニアをアサインし、PostgreSQLを構築しなければならない場合は、データベーススペシャリストとしてOSS-DB Goldレベルのエンジニアをアサインしたプロジェクト体制を構築します。アプリケーション開発のエンジニアが書いたソースコードのレビュー、性能テストやセキュリティのチェック、テストで性能問題が出た場合は、原因を突き止めて解決することもOSS-DB Goldレベルのエンジニアが担当する仕事です。

富永 : そもそもデータベースを扱うデータベースエンジニアとはどういう仕事なのでしょうか?

稲葉氏
私たちの会社は、プロジェクトでPostgreSQLを使うと決まったSIer様をご支援するという立場にあります。また「これまでは商用製品を使っていたのだけれど、今回、PostgreSQLを初めて使うのでよくわからない」といったときに、データベースのスペシャリスト、あるいはPostgreSQLのスペシャリストとしてプロジェクトの一部に参加するというのが私たちのポジションになっています。
当社の場合は、データベースやPostgreSQLを専業でやっているので、お客さまの業種はまったく問いません。データベースという基本技術は、業種・業態への知識よりも、ソフトウェアをしっかり理解していることが重要です。その意味では、どんな業種のどんな仕事にも対応できるということであり、そしてそれがデータベースエンジニアの面白みのひとつでもあると思います。たとえば、遊興施設のシステムも官公庁のシステムも、それぞれ求められる可用性の違いはありますが、技術的にやっていることは同じです。

綱川氏
富士通グループは業務内容が幅広いので、別の角度で大きく区分するとすれば、データベースのソフトを「使う側」と「提供する側」の2つの立場で仕事をしている人たちがいます。当社グループでいえば、使う側とはシステムエンジニア(SE)で、さまざまなシステムを作るときにデータベースを使っています。一方、データベースソフトウェアを提供する側が私の所属する部署になります。具体的には、ソフトウェアを作り、テストを行って品質を確保し、お客さまのトラブルや質問への対応やサポート、またデータベースをどのように使うかを提案するコンサルティングなどが業務となります。

富永 : 綱川さんにとって、データベースエンジニアの魅力とは何ですか?

綱川氏
データベースエンジニアには、さまざまな周辺知識が求められます。下の方の階層ではOSとやり取りして極大まで性能を引き出し、セキュリティを確保します。上の方の階層ではさまざまなアプリケーションからの要求に応じてデータを読み書きすることが求められます。また、最近でいえばAIやIoTでも利用が広がってきており、周囲とのつながりが広いことがデータベースエンジニアの仕事の面白さだと思います。また、先ほどのガートナーの発表にもあるように、データベース市場は、エンタープライズ・ソフトウェアの中では成長株です。そういう将来性のある市場に携われることも魅力のひとつだと思います。

PostgreSQLの深く広い知識を体系的に習得できるOSS-DB Gold

富永 : OSS-DB Gold取得者数トップ3社の方々として、認定取得に向けた社内の制度や学習支援などについてお聞かせください。

田坂氏
当社は「お客様から信頼されるプロフェショナル集団」を目指しており、技術者を育成することは最重要課題として特に力を入れています。その一環として認定取得に向けた取り組みも行っており、対象となる230種あまりの認定のなかでもOSS-DBは重点認定として位置づけられています。
制度としても認定取得者に対する報奨金や教材の提供、模擬試験の無料受験など、さまざまな支援を提供しています。
各認定取得の目標数は、半期ごとに行う会社の「経営方針説明」の中で提示され、部門ごとのKPIとなります。具体的には、OSS-DB Silver取得者を今後も毎年10人増員する計画となっており、私の部では今期、2人の合格者を出すことを目標にしています。あとは各部が抱えているお客さまによって技術のトレンドにあわせて認定者目標数を立てます。

富永 : 取得者の目標数もKPIに組込まれているのはかなり計画的ですね。

田坂氏
データベースエンジニアは育成に時間がかかります。だからこそ、この先に起こることを予想し、先行して育てていかなければ、必要なときにリソースがない事態に陥ってしまいます。特に当社のようなソフトウェア開発会社は、ひとり一人の技術力があってこその組織です。だからこそ、人を育てるということに非常に注力しますし、綿密な計画も立てているわけです。

稲葉氏
当社は全体で約30人おり、そのうちエンジニアは20人ぐらいの非常に小規模な組織で、組織的にはPostgreSQL専門チームとPostgreSQL以外のオープンソースソフトを担当するチーム、そしてメインとなるテクニカルサポートサービスチームの大きく3の技術部門があります。
OSS-DB Silverに関しては技術者全員の必須認定にしています。当社はトレーニングもビジネスにしていて、OSS-DB GoldとOSS-DB Silverそれぞれに対応したコースを提供しているので、取得をめざす若手のエンジニアには、このトレーニングの受講や勤務時間を使った対策本での自習など、学習プランや受験予定日を決めて取得させています。
一方OSS-DB Goldは、PostgreSQL専門チーム全員が取得必須です。しかし、実践を積んだ人が取れる認定であることをみんな認知しているので、PostgreSQL専門チーム以外のエンジニアの中にも最終的にはOSS-DB Goldを取得したいと考えている人は少なくありません。

富永 : OSS-DB Goldがデータベースエンジニア以外にも目指す認定になっているとは初めて知りました。

稲葉氏
OSS-DBは試験範囲が業務で必要な知識に対応しており、PostgreSQLの知識を体系的に幅広く習得できる網羅性があります。経験を積んだエンジニアも普段使っている機能が偏っていたりするので、受験の機会にそうした気づきあることもOSS-DBのメリットだといえるでしょう。また取得することで自信やモチベーションに繋がっている人もいると思います。

綱川氏
当社では、2002年よりミドルウェア製品の技術力を認定する「技術者認定制度」を提供しております。OSSの普及に伴い、2017年から「OSS-DB Silver」との連携を開始し、2020年度は、DX分野を強化した新たな技術者認定制度「富士通ソフトウェアマスター」で「OSS-DB Gold」とも連携しています。「OSS-DB Gold」を取得すれば、富士通ソフトウェアマスターの「Senior Professional Database」の資格も取得できます。これにより、富士通社内の技術者や、富士通製品を活用していただいているお客様、パートナー様の受験機会の拡大に役立てています。
私が所属する部署はデータベースを提供する側なので、使う側よりもより深く広い知識が求められます。その意味でもOSS-DB Goldの取得は積極的に推奨・推進しています。

富永 : 試験対策として具体的にはどうような学習支援を行っておられますか?

綱川氏
取得のための教育施策としては、実機を使った体験型のeラーニングを含むトレーニングコース(4講座)を用意しており、社内外で広く活用いただいております。弊社のトレーニングコースを受講いただいた上で、LPI-JapanのWebサイトにあるサンプル問題/例題解説、SRA OSSのセミナー、PostgreSQLに関する市販書籍も併用することにより、効果的な学習ができると思っており、OSS-DB GoldやOSS-DB Silverの合格により近づくことができると認識しています。
市販書籍では、「内部構造から学ぶPostgreSQL設計・運用計画の鉄則(技術評論社)」が非常に参考になったという声もありました。

IT技術者のキャリアアップにおけるOSS-DB Gold認定の魅力

富永 : データベースエンジニアの育成において、OSS-DB Gold認定を活用するメリットとは何でしょう?

田坂氏
当社の若手エンジニアは、入社時のスキルや希望を元に、各分野のエンジニアとして育成していきます。データベースエンジニアもその例に漏れません。エンジニアの育成やスキルアップに必要な認定取得者の人数について年度単位で目標を定め、計画的に取得しています。OSS-DB GoldやOSS-DB Silverもそれらの認定のひとつです。
システム開発における活用だけでは必要な機能だけに集中しがちで、他の機能のことは詳しく知らないことが多くあります。OSS-DB Goldのメリットは、体系的にすべてのアーキテクチャーを学べることにあります。これを取得することにより、新しい要件に対応するときに全体を知った上で最適な解決策を提示することができます。
また、毎年受注する案件には一定の割合でPostgreSQLを使う案件があるので、計画的に育成をしていく必要があります。データベースエンジニアは、案件が来てから育てようとしても間に合わないのです。

稲葉氏
たしかにOSS-DB Goldクラスのエンジニアになるとすぐに育成することはできません。当社にはPostgreSQLを専門に担当しているデータベースエンジニアがベテランから若手まで10人弱います。そのトップはコンサルタントですが、そのレベルに達するためには経験値も必要になります。そのため、若手のエンジニアに対しては、数年単位でステップを踏みながら育成しています。
OSS-DB認定のいいところは、座学でテキストだけ読んでいれば取れるという認定ではなくて、一定の実務経験を積んだことがある人が取れる認定であることです。だからこそ難しいのですが、本当の実力が評価・認定されるという意味では価値が高く、取得者にとっては利点だと思っています。私たちもパートナーに入ってもらうときにOSS-DB Goldを持っていると「それは安心だ」と感じますね。

綱川氏
おっしゃる通り、データベースエンジニアの育成が一朝一夕では難しいことは事実です。ロシアに「Postgres Professional (https://postgrespro.com/)」というPostgreSQLを専門にしている会社があり、コミュニティでも精力的に活動しています。一昨年、カナダで開催されたカンファレンスでそこの人事担当の方と会ったとき「一人前のデータベースエンジニアを育てるには5年かかる」と話していました。彼女の意見には私も納得します。
しかしその一方で、日本の求人情報サイトをザッと見てみると、PostgreSQLを求人の要件にしている案件が常時5,000件近くありました。今、注目のAIやIoTの方が華やかそうに見えるかもしれませんが、このPostgreSQLの需要に対してOSS-DB Goldで能力を証明できたら、若い人でもさまざまな分野で活躍できる機会があるのではないかと思いました。

稲葉氏
プログラミング技術+OSS-DBは、採用する側にとってかなり需要がありそうですね。
実際、さまざまなシステム開発でデータベースの課題にあたり、「それを解決する過程で面白くなり、データベースを専門でやりたくなりました」という人はけっこういます。「自分はデータベースのような領域が向いているな」と思った人が、次にめざす専門性としてデータベースを捉えてくれてOSS-DB Goldをめざし、アプリケーションなどの開発経験を兼ね備えたデータベースエンジニアが育ってくれればいいかなと思います。

富永:なるほど、データベースのスキルを磨くことがさまざまなIT技術者のキャリアアップにつながっていくことがよく分かりました。そういった意味でOSS-DB Gold認定は、企業にとっては競争力をつけるために必要となるIT技術者の育成プランに厚みを持たせ、またすべてのIT技術者にとっても将来のキャリアアップために取得しがいのある認定だといえそうですね。本日はどうもありがとうございました。

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